定言命法(ていげんめいほう)とは、カント倫理学における根本的な原理であって無条件に「?せよ」と命じる絶対的命法である。『人倫の形而上学の基礎付け』 において提出され、『実践理性批判』において理論的な位置づけが若干修正された。
『実践理性批判』の§7において「純粋実践理性の根本法則」として次のように定式化される。
「あなたの意志の格率が常に同時に普遍的な立法の原理として妥当しうるように行為せよ」
カントによれば、この根本法則に合致しうる行為が義務として我々に妥当する行為なのである。
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他のあらゆる倫理学の原則が「?ならば、?せよ」という仮言命法の形をとるのに対して、カントの定言命法は「?ならば」という条件節を欠き無条件に行為することを要求する。例えば、「幸福になりたいならば嘘をつくな」という仮言命法を採用する場合、幸福になることと嘘をつかないことの間の必然的な関係が問題となる。幸福になることが目的であり嘘をつかないことは手段にすぎないから、誠実さと幸福の間に必然的な関係が見出されない場合には幸福を原理にする人は不道徳(嘘をつくこと)であることを要求されるだろう。また、仮言命法において何が道徳的かであるかの洞察は、行為(嘘をつくこと)と帰結(幸福)との間の自然必然性の洞察にすぎず、これは経験から出発する理論的認識に属する。条件節を欠くカントの定言命法は、倫理学が理論的なものに陥ることを防ぎ、理論的認識から独立した純粋に実践的な倫理学の領域を確保するのである。